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社団法人日本温泉協会発行「温泉ONSEN」2012年2月号より

村杉ラジウム温泉の将来に向けて

荒木 善紀 (村杉温泉組合長)

関湯677年の歴史と全国トップレベルのラジウム含有量を誇る名湯村杉温泉。昔から「万病の湯」「子宝の湯」「通風の湯」として近衛文麿公、橋本関雪、河東碧梧桐、相馬御風、野口雨情等々の文人墨客に愛され続けて参りました。大正3年、新潟医専薬学士(現新潟大学医学部)の中山蘭教授らによる温泉分析の結果ラジウム含有量が世界レコードであると言うことが当時の新聞に掲載され全国各地から人々が訪れ、一世を風びした歴史があります。大正10年には日本初の林学博士である本多静六先生が訪れ、ラジウム温泉と雄大な自然環境を活用した壮大なる計画「村杉ラヂウム温泉風景利用策」が提案され、今も新潟県立図書館に保存されています。

本多静六博士は、当地は森林を有し土地の良好なる上にラジウムを多量に含む温泉を有しているのですから、将来極めて有望にして大いに発展すべき資質を有するものと考えますと示しています。「風景利用策」の内容は、実に詳細で具体的に示している。土地利用の平面図まで添えられ、ラジウム温泉の効能の素晴らしさは勿論のこと、森林浴の効能や登山道、遊歩道の整備や有効活用、展望台の設置、名物や土産物の提案まで描かれています。

今後の展開

今後の展開としては、100年近く実現出来なかった【夢の構想】を本多静六博士、現代版【村杉ラジウム温泉風景利用策】と位置づけ、開湯677年の歴史と全国トップレベルのラジウム含有量を誇る温泉と五頭連峰県立自然公園の雄大な自然環境の有効活用を図り、「環境」と「健康」をテーマとした温泉地創りを推進して参ります。平成18年以降、知事の進言もあり、新潟県が推奨する「健康ビジネス連峰政策」に参画し、ラジウム温泉と地域資源を最大限有効活用したヘルスツーリズム、アンチエイジングツアー等を実施することにより、大学や健康関連機関との連携により「エビデンス」の取得等を図りながら「ブランド化」を目指し推進して参りました。また、NPO法人健康と温泉フォーラムの支援を頂き、三朝、増富、玉川の各温泉地との連携を確立し、情報交換をはじめ、会員募集、連携による大々的な名情報発信及びPR展開を始めました。順調に推移し始めた矢先の事、平成23年3月11日、あの忘れられない一瞬のうちに大勢の人々の命を奪い去った東日本大震災、福島原子力発電所の事故により放射能問題が毎日の様に大々的にマスコミに報道され、残念ながら一転して来館客、入浴客が激減してしまいました。キャンセルの連続により2ヶ月近くに渡り、休館状態のような毎日が続き、経営の危機に立たされてしまいました。外湯も入浴客が大幅に減少し、現在も震災前に比べて20%程の減少が続いている状況です。

原発事故直後は村杉温泉に入ると被爆するのでは?温泉に入っても大丈夫ですか?原発事故の放射能と何が違うのですか?等々の問い合わせが当館はもちろんの事、観光協会、旅館組合、温泉組合に殺到いたしました。私共も自分達で得て来た知識で対応させて頂いて参りましたが、最終的にはマーケットに対し正確な情報を伝えなければなりません。そんな中で学者の先生方に相談を仰ぎ、最初に温泉組合員を始めとする地域の方々に大学教授から放射能と放射線についての説明や自然界の放射能と原発事故の放射能の違い等を講演して頂き、先祖代々700年余りの歴史の中で元気に生きながらえて来た事、100歳に近い方々が笑顔で元気に生存している事等の事実を含め、科学的根拠を踏まえた講演を頂き、村杉ラジウム温泉は本物の温泉であり、健康増進・療養にかけがえのない温泉である事を地域住人が誇りを持って情報発信を出来る共通の認識を持つレベルに達しました。
今後も、学者の先生や健康関連機関との連携を一層深め、正確な情報をダイレクトにマーケットへ発信し、ラジウム温泉の効果・効能を大々的にPRし、マーケットに存在価値を浸透させ「ブランド化」の確立に向け日々努力を続け、放射能問題に対してお客様の不安感を払拭し、お客様の減少からの脱却はもちろんの事、より一層の増客を目指して再構築を図り、後継に守り伝えて行かなければと強く実感しております。

出典:社団法人日本温泉協会発行「温泉ONSEN」2012年2月号より

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