';

サイトメニュー

村杉温泉に関する論文より

五頭温泉郷の村杉放射能温泉について

島津 光夫 (新潟大学名誉教授)

長生館の庭のBI濃度分布

1414

1515

測定結果(2)

1.1号井のBiは3215ですが、3号井は 2255と低い値です。現在湧出している 井戸の傍での測定の場合は、井戸の中のラ ドンを含む水の放射能を検知しているのか、 井戸のまわりの放射能を測定しているのか の両方、あるいは一方かもしれません。

2. 1号井は自然湧泉ですので、お湯の中のラ ドンを検知していると思いますが、3号井 はまわりの放射能と思われます。長生館の 庭の清水は高い値を示していますが、清水 の中のラドンの量を示していると思います。 荒清旅館の井戸も同様でしょう。環翠楼の 庭でやや高いのは地下浅い所にラドンを含 む地下水があるためと思います。

村杉温泉のラドン泉の出かた

1.湯脈

3号井の近くに Bi 3148という高い値を示す所がありますが、 そこには泥岩がでています。 お聞きしたところによると、3号井は初め最大毎分530リット ルの湧出量があって、暴噴し、その際1号井と2号井が枯れ たとのことです。そのため湧出量調査をして、3号井を毎分30 0リットルに抑制して利用することにしたとのことです。 このことは明らかに、 3つの井戸が連結している ことを示して います。すなわち、3つの井戸の湯は同じ割れ目から出て いることを示しているのです。 3つの井戸を結ぶ方向が湯脈 (割れ目)の方向です。西に傾いていると思われます。 何故暴噴したか 。おそらく3号井のまわりに泥岩がでてい ますが、井戸を掘ることによって泥岩に抑えられていた湯脈 の湯が、圧力が開放されたことによって噴き出したのだと思 います。湯脈は他に もあると思いますが、その1つが長生 館の庭の清水と思われます

2.地下水(伏流水)

長生館の庭にはいくつかの放射能の高いとこ ろがあります。また湯脈をはずれた環翠楼の 庭や石原館や川上館の水井戸のそばでもやや 高い放射能が測定されました。井戸の水を分 析すると、長生館の井戸では38マッヘ、石 原館の井戸では 18 マッヘ、川上館では 30 マッ ヘのラドン量を示します。 村杉温泉地域の地下には土石流堆積物(砂礫 層)がでています。この砂礫層の中を伏流水 が流れています。この伏流水に湯脈からのラ ドンを含む湯が混じって流れていると思われ ます。

1616

熱源について

長生館の庭の清水は 13 ~ 15 度ですが、自然湧 の1号井の泉温は 26 度で、冷鉱泉ではありま せん。長生館の水井戸の資料から推定される 地下増温率は 100 メ-トルあたり 12.6 度で、出 湯温泉の 19.5 度よりは小さいが、宝珠温泉の 5.0 よりは大きい値です。薬師堂の裏にある流 紋岩が熱源ではと思われますが、確かではあ りません。

村杉低地帯ラドン郷

村杉温泉はラドンの多い放射能温泉です。今板温泉や出湯 温泉も15マッヘ以下ですがラドンを含む弱放射能温泉で す。ところが、放射能測定の際にも村杉温泉以外でもやや 高い値を示すところがあり、気にしていました。その後、 杉村さんが水を分析したところが、20マッヘ程度の値を 示す井戸が村杉低地帯内にいくつかでてきました。

まだ例はわずかですが、融雪道路用の井戸が村杉低地帯に 沢山ありますので今後調べたいと考えています。これらの 井戸の水は地下24~35m付近にでている砂礫層(今板 土石流の堆積物)からでています。村杉温泉以外にもラド ンを含む湯脈がどこかにあってそこを通して流れてきてい ると考えられます。 村杉温泉付近や村杉低地帯の道路を歩くとラドンを含む空 気を吸入することになります。全く珍しいところです。村 杉低地帯ラドン郷とでもよんだらと考えています。

杉低地帯

1717

新発田-小出構造線について

新発田-小出構造線といわれている大断層帯は、衛 星写真では新発田から小出を通り、六日町の方まで 延びているように見えます。大きくは中生層や花崗 岩のような基盤と新第三紀層の境になっています。 五頭西麓では、明確なのは出湯から草水までで、少 なくとも2本の断層が認められます。 西側の断層 は宝珠温泉の東側を通ると思われます。 村杉温泉の南では花崗岩は地下150メートルにい ますが、宝珠温泉では地下300メートルに出てい ます。したがって断層が推定されます。笹神丘陵は 川を境にしていくつかのブロックに分かれています。 丘陵ができてから東西方向の小規模な断層で分断さ れたものと思われます。

1818

1919

笹神丘陵の西の地下は(越後平野の地下構造)

石油探鉱のために掘られた水原 R2, 水原 R3 で は花崗岩が400~500mにでています。 七石 SK-1 では実に3300mにでています。 笹神丘陵の西縁の地下にも大きな断層がある ことになります。 村杉低地帯の西部ではいくつかの断層で、越 後平野に向かい、基盤の花崗岩が深くなり、 その上に厚い新第三紀層がたまっています。 水原付近では石油は見つかりませんでしたが、 阿賀野川の近くに南阿賀油田があります。

2020

2121

村杉温泉と断層との関係

東側の断層 は長い間に五頭山地が1000メート ルも上昇したためにできた断層です。 村杉温泉を通るのはこの東側の主断層ですが、そ の東側にも何本も破砕帯があります。この破砕帯 を通して浸透する天水あるいは地下からの水に よって花崗岩の深層風化が進み、ツベタや草水付 近ではマサ化が進みました。このマサ化した土砂 が採掘されてるのです。一部には破砕帯に沿い火 山岩の岩脈が入っています。

村杉温泉の割れ目 はこの断層に関連した割れ目と 思われ、かなり深い所までつながりラジウムを含 む温水が上がってきていると思われます。このよ うな割れ目はほかにもあると推定されますが、昔 からでている 村杉温泉の割れ目は最もラドンを多 く運んできているようです。

1995年新潟県北部地震と月岡断層

平成7年福島潟付近でマグニチュ-ド6.0の直下型地 震が発生し、笹神村上高田や豊浦町天王などが大きな被 害を受けました。地震直後私も調査に来ましたが、皆さ んも身体に感じた事と思います。 震源地は上高田で北東-南西方向に5キロほどの範囲が 震度最大6でした。地下10キロ付近に西側傾斜の震源 断層が伏在したと推定されています。この地震の際、月岡断層が問題になりました。しかし、 月岡断層が動いたという事実はありません。地震後、活 断層かどうかを調べるため、一部で掘削して調べました が活断層かどうかはっきりしませんでした。航空写真を 立体視すると、笹神丘陵の東縁が急崖のように見えます。 月岡断層は地形から推定された活断層のようです。南西 延長の村松の愛宕原の東端には活断層があります。

2323

2424
この資料を共有する・教える トップページへ戻る